映画『パッセンジャー』レビュー

良くも悪くもスター映画

 人類の新たな移住先の惑星を目指し、5000人の乗客を乗せて120年に渡る宇宙への旅に出たアヴァロン号。冷凍睡眠状態の乗組員は到着直前に目覚める予定のはずが、技術者のジムはただ一人、到着まで90年もの時間を残して目覚めてしまう。孤独な宇宙船の中で正気を失いつつあった彼は、機械の中で眠るオーロラに一目惚れ。いけないと知りつつも事故を装い彼女の冷凍睡眠を解除する。広大な宇宙船にポツンと残された男女は、当然ジムが望んだような関係へと発展するが・・・。

 宇宙船を舞台にしたSF映画ではあるが、物語自体は純粋なラブストーリーだ。アダムとイブのように愛する者と二人っきりの展開は、西〇カナも震えあがるであろう恋愛を突き詰めた究極の世界。ところが嘘から始まったこの恋は、いつジムが故意にオーロラを起こしたことがバレてしまうのか、そんなリスクが常に頭をよぎる。

 ハイクオリティな視覚効果や今年のアカデミー賞にもノミネートされた近未来の美術は素晴らしいが、それでも本作がSF映画としての魅力に乏しいのは、奥行きに欠けるからだ。ジムはなぜ自分だけが早く目覚めたのか、その原因を探っていくが、そもそも事の真相についてはオープニングで既に説明済み。観客にとっては謎解きの要素は無く、ただただ甘ったるいラブストーリーを高みから見物する羽目になる。本来なら作劇の自由度は高いはずなのに、設定の妙を放棄してこちらが恥ずかしくなるようなベタな物語に終始してしまうあたり、大型予算を投じて人気スターを主役に据えたハリウッド映画の限界なのだろうか。一人劇を盛り上げるクリス・プラットのユーモアと、無機質な宇宙でも体温を保ったジェニファー・ローレンスの肉体の感触はさすがと言うべきなのだけど。

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パッセンジャーのポスター
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奥 直人

映画暦15年。思いのままをレビューにぶつけていきます。

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