映画『キングコング 髑髏島の巨神』レビュー

コングの黙示録

 CGで描かれる猛獣たちのアクションが売りの本作だが、それでも人間への興味が失われていないのは嬉しいばかり。舞台をベトナム戦争直後に設定したことで、髑髏島での惨劇が戦争のトラウマと重なっていく。人間が虫けら同然に次々と蹴散らされる無慈悲な地獄絵図は、非日常の追体験に他ならない。そして狂気に直面した人間が武器を手に血みどろの戦闘へと向かっていく様に、戦いこそ人間の性であり、むしろ人間は自ら戦争を求め飛び込む生き物なのだという絶望的な真実が顔を覗かせる。「地獄の黙示録」の如く、壮絶な戦火に照らされた人間から、黒く深い影が伸びる。

 単なる一本道のサバイバルアクションに非ず。示唆に富んだテーマ性は、金に物を言わせた能天気なハリウッド映画に終わらないぞと言わんばかりの強い意思が感じられる。ただ、常人には理解しがたいサミュエル・L・ジャクソン演じる軍人の私怨に振り回される物語は、ジェットコースタームービーとしての勢いを削いでいるのも事実。戦争映画のような小難しいテーマ性で武装せずとも、死への反動から生を渇望する「怒りのデス・ロード」のようなストレートな作風にした方が、むしろ大自然の脅威の中では「生き物としての人間」を浮かび上がらせるのに適切だったかもしれない。

 テンポを重視して爆音と共に大胆に場面を飛ばすCM的な編集は確かにリズミカルだが、犠牲になったのは未開の地に足を踏み入れるおどろおどろしさだ。結局は予告編通りモンスターが現れては暴れるの繰り返しで、迫力はあれどサプライズは皆無。まさにCM通りの仕上がりと言ったところ。遊び心が多く細かな演出には感心させられる部分が多いだけに、全体として駆け足で雑な印象なのは残念。

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キングコング 髑髏島の巨神のポスター
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奥 直人のプロフィール画像

奥 直人

映画暦15年。思いのままをレビューにぶつけていきます。

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