アルゴ

2012年10月26日公開
アルゴのポスター
8.4

どんな映画

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フリークレビュー
7

ベン・アフレックの作家性

イラン過激派によるアメリカ大使館襲撃、占拠事件。冒頭、現実のニュース映像を挟みながら、事態の深刻さを観客に突きつける。この絶体絶命な状況を打破する為にCIAがとった作戦は
“フェイク映画製作”!?
マジか?大丈夫なのか?観客はこの嘘みたいな作戦を半信半疑で見守ることになる。

テンポよくスリリングかつユーモアも交えながら、緊張感途切れることなく娯楽作として見せ切る監督の演出力は本物。国と国の争い、重い実話なだけに、やや展開の軽さは気になった。

かろうじてカナダ大使館に逃げ込んで救出を待つ6人に知名度の低い役者たちを起用したことが大きな勝因。まるで自分も7人目の映画製作スタッフになったかのような臨場感、無茶な逃亡作戦を体感した。

『ザ・タウン』同様、物語の軸には家族や愛する人への想いがある。スリルとドラマ(甘さ)の共存は、映画作家ベン・アフレックの個性だ。

小口 心平
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映画宣伝マン
8

地味なのに面白い

 前売り券を買うかレイトショーで見る習慣なので、この映画の前売りが全く出回っていないとは露知らず、非常に面食らったし、1800円の重みをかみ締めながら、もし面白くなかったらどうしよう、全く大損じゃないかとイランの人質救出までとはいかないまでも、こっちもかなりの緊張感で映画に挑んだ。

 始まった途端そんなのすっかり忘れるくらい夢中で、終わるまで全く退屈しなくて通常料金でも損じゃなかった、というか映画館で見れてよかったと思った。困難に勇気を持って挑む男女の姿がとてもスリリングに描かれていて面白かった。

 アメリカの映画人の、同業者の悪口をいいながらもそれでいて楽しそうで、仕事に誇りを持っている感じもよかった。

 イランとアメリカがどれくらい仲が悪かったのかまったく不勉強でこの映画で初めて知ったくらいで、勉強になった。

 サスペンス要素は若干とってつけた感はあった。いくなんでもそんなにギリギリはないでしょう?と思った。

古泉 智浩
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マンガ家
9

真摯な「愛」が支える、至高の「お仕事ムービー」。

このレビューにはネタバレが含まれています。

 冒頭の一連のイラン暴動は、どこがフッテージでどこが新撮かも判らないほどの質感と動感。きめ細かいカットワークと揺れる画は体温を備え、観る側を70年代に引き込む。

 トニー(ベン・アフレック)が思いつく作戦。それは、会えない息子と電話で語り「息子が観るテレビを自分も観る」ことで生まれる。
これは大事なポイントだ。メッセージとも言える。世界を動かすような仕事も、ベースにあるのは家族への<愛>だと、ひとまず言い切る。

 CIAも、ふつうの会社組織と変わらない。仕事で家族を顧みられない人間たちが軋轢や齟齬の中で「日常」の仕事を続ける。
 人質事件は確かに大きい。しかし彼らの日常の延長線上にある。特別な人間が特別な能力で取り組むわけではない。「仕事」なのだ。
 それを語る演技と画。簡潔かつ饒舌。

 虚飾と勢いだけの70'sハリウッドを描きながらも、映画製作という「仕事」への抑えがたい<愛>が見える。
 厄介なパートナーへの抑えがたい<愛>。

 トニーに迫る危機。彼を守るために上司のジャック(ブライアン・クランストン)が奔走する。こういう上司を持とう。こういう先輩であろう。仕事と、仕事に命を懸ける相棒への<愛>だ。

 物語上の「敵」であるイランの革命防衛隊にさえ、この映画は<愛>を見出す。まー無理やりな言い方だが間違ってはいないぞ。

 不謹慎だが、こういう題材が色々拾えるアメリカという国は羨ましい。良くも悪くもどうにかして「フェアであろう」としている。日本には隠された歴史が多すぎる。誇りを持てる物語が少ないのだ。

 稀有な実話を、ベンは確実な技術でモノにした。この映画の組み立てを評するなど、野暮の極み。
 元の話にも、映画という存在にも、等しくベンが抱いている尊敬と愛が、 ベンの頭脳と技術をドライヴしている。

 必見。今年一番かも。

Daisuke O-oka
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VTRディレクター
10

この映画好きすぎる

物語の面白さと映画へ愛が

僕の"信念"のようなところに響いて来て、

ラストで泣いてしまった。

嘘みたいな事実を監督は

スリルと愛と嘘に溢れた物語にデコレーションしていた。

「映画の可能性」をまざまざと見せつけられ、監督に敬服。

「映画の魅力の一つは、観客を幸せな気分にさせる嘘だろ?」

ベン・アフレックのウインクが見えるようだった。

プロデューサーにジョージ・クルーニー。

彼は本当にこういう社会派大好きですね。

みんな格好良すぎ!

完山 京洪
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映画人
9

映画人ベン・アフレックの神髄

「ベン・アフレックをこれまで馬鹿にした事がある者、怒らないから挙手をしなさい。…うん、君達は正直者だ。実はな、白状すると先生もなんだ…。」
ベン・アフレック程叩かれた俳優も稀だろう。仕事選び、演技力、ジェニファー・ロペスとの熱愛…全てが攻撃の対象となり、遂にはラジー賞も受賞。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』でのオスカー脚本賞受賞という功績も「どうせマット・デイモンが全部書いたんだろ?」と揶揄される程であった。私もそのアフレック批判の尻馬に乗った事を否定しない。
しかし彼はその世評を自ら覆していった。最初の契機は『ハリウッドランド』の演技であろうか。しかしそれでもまだ「大根役者だから大根役者役がハマったのだ」と言われていた。しかし弟ケイシーを主演に据えた監督デビュー作『ゴーン・ベイビー・ゴーン』が予想を覆す傑作であり、主演も務めた監督第二作『ザ・タウン』はさらなる傑作であった。
しかしこの二作はまだフロックだったのかもしれない。彼の実力を問うならば、それはこの三作目。「他人の脚本」「舞台が故郷ボストンではない」「時代物」…前作までを成功させた保険の無い本作に地力が出るはずだ!結論は?…ベン・アフレックさん、ここに陳謝します。貴方は「本物」でした。
時代の空気を掬い取り、一瞬もダレさせない演出力は見事。特にクライマックスのサスペンスの「うねり」は事件の顛末を知っていてもアドレナリンが噴出。しかし本当に驚いたのは「役者ベン・アフレック」の魅力だ。酸いも甘いも噛み分けた大人の色気。「前」を見据える澄んだ眼差し…。「僕を信じてくれ」という人質達への言葉に、思わず心の中で土下座をした。
盟友デイモンがアフレックを「第二のクリント・イーストウッド」と評したのは監督としての力量のみならず、役者としての円熟も見抜いたからではないか?まさにベン・アフレックがその神髄を見せた傑作だ。

岸岡 卓志
岸岡 卓志のプロフィール画像
るろうに
8

おれたちの実話(という思い込み訂正による書き直し)

村山章氏のレビューにより、私が「実話をもとにしたエピソードに突如過剰なサスペンスを取ってつけたような安い演出。前代未聞の実話にあえて映画を盛る必要なし」とした空港の2シーン以外にもフィクションが多数含まれていることを知りましたのであわてて訂正し、「いかにも実録っぽい雰囲気で地味に進んでたのにあの2箇所だけ派手なサスペンスっぽいトーンなのがむしろ興ざめだったわー」というしょっぱい感想に置き換えさせていただきます。点数はそのまま。

田中 啓一
田中 啓一のプロフィール画像
詩人だねぇ
8

もしも、ああなったら、ああでありたい。

ここ最近、突飛な設定とドラマとのバランスに違和感を感じる作品について、何度か思うことがあった。
本作もまた、「まるで映画のような実話」がベース。
でも、もしや、もしや…という私の懸念は、完全に払拭された。

フックとなっていた「実話の意外性」は開始10分で忘れ去られ、崖っぷちに立たされた男たちの「あるべき姿」に惚れ続ける瞬間を重ねた2時間。
「クライマーズ・ハイ」「大統領の陰謀」「ゾディアック」に観た「現場感」に引き込まれ、「マネー・ボール」に似た佇まいに「ふさわしい着地」を見た。

ソダーバーグが窮地に陥った人間はどうなるのかを描いた「コンテイジョン」を思いながらも、距離感はまったく違う。
がっちりと話の軸が据えられ、社会派を匂わせながらも、アメリカ映画の美徳であるヒーローイズムが貫かれている。
そしてそれは、すばらしく抑えの効いた描き方で、手に汗握らせるのだ。

こんなイカした計画は、日本では起こらないとは思いつつ、「もしも、ああなったら、ああでありたい」と思う人たちに、自分を重ねる。
ベン・アフレックをかっこいいと思ったことはあまりないけど、今回ばかりは惚れました。

いくつかひっかかる点もあるものの、アメリカ映画の小さな復活を感じた一作。

茅野 布美恵
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会社員
9

フィクションのちから

このレビューにはネタバレが含まれています。

誰に頼まれるでもなく、誤解を解いておきたい。
ノンフィクションだから面白い、ではない。
『アルゴ』の真価は、映画化にあたって
実話という縛りをかなぐり捨てたことにある。

本来ベン・アフレックは地味シブな演出家だ。
音楽やカメラワークはなるべく目立たせず、
必要なことだけを実直に、確信を持って積み上げていく。
そんなアプローチは実録風の前半にピタリとハマった。
もはやベテラン職人監督の手堅さである。

ところが、肝心の脱出作戦が始まるとスタイルは一転。
矢継ぎ早にやってくるピンチ&スリル。
一瞬も油断が許されないノンストップの緊迫感。
滑走路を走る旅客機をジープが追ってくるくだりなんて
ほとんど『フェイス・オフ』冒頭のノリ。
言い換えるなら、ほとんどマンガである。

ぶっちゃけ、クライマックスではベンアフは明らかに
「面白ければなんでもやる!」という意気込みで臨んでいる。
「こんなのありえねえ!」と思いながらも、
なりふり構わないベタさに乗せられてハラハラドキドキが止まらない。
これが映画だ。娯楽映画の鑑だ。
実話と違っていても構わない。
現実より面白く、は劇映画の責務だし、
フィクション(ニセの映画)が人命を救った実話の構図を考えれば、
フィクションのちからを最大限に利用した演出も
実話へのリスペクトの顕れなのだ。

と、ここまでは鑑賞時の感想。
興味が湧いたので、一応、原作本も読んでみた。

で、予想はほぼ当たっていた。
原作は映画の半分も面白くなかったが、
実際の脱出では6人は非常に協力的で、
バザールの視察にも行っておらず、
空港でもほぼトラブルなく出国に成功。
さすがCIA、頼りになるわ。
でもそのまま映画化しても絶対に盛り上がらない。
事実は小説より奇なり、だが、映画はさらにその上を行く。
そんな“映画への圧倒的な信頼”が
『アルゴ』の感動の原泉だと思っている。

村山 章
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映画ライター

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