砂漠でサーモン・フィッシング

2012年12月08日公開
砂漠でサーモン・フィッシングのポスター
6.1

どんな映画

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フリークレビュー
3

やはり鮭は塊で焼くに限る。

このレビューにはネタバレが含まれています。

砂漠でサーモンフィッシング、と書くと長いので「鮭」で良い。

本当ならプロジェクトX級の難事業だ。
それも「映画を観ている誰もと同じ、悩み多き人々が頑張って成し遂げた」という語りなら判る。
しかし「あー収まるところに収まって良かったね」というホンワカした観後感しか残らない。要は単なる「惚れた腫れた」話。

サイモン・ビューフォイの脚本といえば「フル・モンティ」「スラムドッグ・ミリオネア」そして「127時間」正直、そんなエネルギーを期待していた。

難事業への壁。それは家族や恋人とのプライベートにあり、国家や企業の体面や欲得にある。それをも乗り越えるのは何だったのか。彼らが捨てたものは何で、得たものは何だったのか。捨てるのも得るのも軽すぎる。

シャリフの思いは壮大だ。自分の趣味の鮭釣りを自国でやりたい我儘だけじゃない。自国を緑化して農業と観光を盛り上げ、殺伐たる中東にもう一つの選択肢を置く気概なのだ。それもスコットランドの城やテントの中での茶飲み話で語られてしまう。

ユーモアや優しさが必要な題材なのは間違いない。しかしそれが全面に出てしまい、各々の登場人物が追い詰められたときに勝ち得る「発見」や窮地を乗り越える「提案」の一切がボケているのだ。

鮭が放流される場所も「これ?…これ?」というあっけなさ。どんな場所にどんな規模で放流するのかを画や位置関係で見せてくれていないのでワクワクしない。シャリフの思いはフランクやハリエットの恋模様に掻き消されて萎んでいる。仕事に恋が絡むだけの話なら「砂漠に鮭」でなくロンドンやNYでやればいい。

キャストも良い。撮影も良い。題材も良い。しかし料理の仕方を間違った。
やはり鮭はテリーヌやムースなどでなく、塊をガッツリ焼いて塩胡椒に限る。

Daisuke O-oka
Daisuke O-okaのプロフィール画像
VTRディレクター
8

正気と未来のための「今」の映画。

砂漠で釣り?
意表をつく設定に、期待とともに薄っぺらい着地を懸念していたのが正直なところ。
一見、よくある恋愛を絡めた自分再生の話にも見える。
でも、そのライトに描いた向こうに、実は普遍のテーマが隠されているように思えた。

アラブの大富豪シャイフの「イエメンでサケを釣りたい」という希望に、両国との関係をインスタントに回復しようとするイギリス国家の思惑が絡み…。
シャイフのプロジェクトは単なる金持ちの気まぐれではなく、国の未来を見据えた行動。
本作の軸がここにあるように見えるけれど、そこで終わってしまうのはもったいない。

大成功と見えたこのプロジェクトが壊される過程を観ながら思い出したのは、「この空の花-長岡花火物語」で感じた「正義と正気」のことだ。
正義と正義がぶつかれば戦争(争い)が起こる。
プロジェクトを壊した彼も、国を守ろうとした彼なりの正義。
シャイフが描いた未来予想図と同様、彼が望む未来があったのだ。
では、どうしたらいい?
誰もが諦めかけた瞬間、最後に残った一匹のサケの「ひと跳ね」が正気を引き戻してくれる。

未来のために尊い今を掴めと。
いや、今を尊いものにするために未来を考えることを許してくれる、と言ったほうが私の感想に近いかもしれない。

イメージしやすい未来のために選ぶ今よりも、
選んだ今が作っていく未来に関わっていたいと思う。
そう考えるほうがいい時も、あるんじゃないだろうか。

茅野 布美恵
茅野 布美恵のプロフィール画像
会社員

『砂漠でサーモン・フィッシング』のカラーレビュー

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