おおかみこどもの雨と雪

2012年07月21日公開
おおかみこどもの雨と雪のポスター
7

どんな映画

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キャスト
宮崎あおい, 大沢たかお, 林原めぐみ, 谷村美月, 麻生久美子, 菅原文太
スタッフ
監督:細田守, キャラクターデザイン:貞本義行, 主題歌:山下達郎, プロダクション協力:マッドハウス
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フリークレビュー
9

少女幻想の続き

細田守監督の近作では思春期の感情を見事にすくい取った『時をかける少女』には素直に感動したが、続く『サマーウォーズ』の日本的「旧家」を肯定的に捉える様には大島渚作品(『儀式』とか)ファンとして首を捻る事になった。家族観の相違や設定の粗を吹き飛ばすだけのカタルシスは備えていたのだが…。という訳で本作には幾分懐疑的な姿勢で臨む事になった。ところがどっこい本作はそんな不安を吹き飛ばす傑作であった。
序盤で描かれるヒロインと「おおかみおとこ」のラブストーリーを観て「ああ、これは吸血鬼を狼に置き換えた和製『トワイライト』なのだなあ」と思った。少女が異質な存在に惹かれ恋に落ちていく…その過程はまさしく『トワイライト』。しかし本作では「運命の恋人」は二人の子供を残し、あっけなくこの世を去ってしまう…。本作は『トワイライト』のような願望充足ファンタジーの「その後」を描いた作品なのだ。
娘を語り手とした本作は、少女の母親としての成長、そしてそれぞれ異なる道を歩み出す姉弟の姿を丁寧に描き出す。これまでの細田作品とは異なり十数年という長い期間をクロノジカルに綴っているのだが、演出が冴え渡っている。短いエピソードを積み重ねていく個々の描写が非常に魅力的だ。特に画と音楽だけで魅せる一連の「無声」シーンの数々には痺れた。「アニメーション的興奮」だけに留まらない「映画的興奮」を、細田演出はこのスペクタクルがない物語で観客に与える。その手腕には脱帽するしかない。
『サマーウォーズ』に通じる「甘さ」は本作にも確かに存在するが、それもまた細田守監督の「味」、作家性と言えよう。もう一度言おう、傑作である。

岸岡 卓志
岸岡 卓志のプロフィール画像
るろうに
9

親子で楽しめるすばらしい作品

前半で慎ましい結婚生活を見ていた時、
「あぁ、もう僕には手に入らない、諦めてしまった別の夢だな」
とか思ってすごい泣いた。

幼少期の雨は、もう最高に可愛いです。
よく食べ、よくしゃべり、走り回って、散らかし回る。
あんな子供に恵まれたら幸せだろうな。

実写でできない、アニメだからこその魅力を存分に楽しめます。
ぜひおススメします。親子で楽しめるすばらしい作品。
間違いなく今、日本で先頭を走る映画監督の一人ですよね。

P.S
もしかしたら、きっと今こういう母親像が求められているのかなとか、
やっぱり日本人男子はこういう女性像が好きなのかなとか、
考えたりした。自作に対して幾つか考えていた事にも繋がったりした。
それがちょっと残酷かも、とも思ったりしたので、
女性より男性の方がこの監督の作品は好きかもしれません。

完山 京洪
完山 京洪のプロフィール画像
映画人
3

「命」の捉え方が甘すぎる。高度なアニメ表現で糊塗された脆弱さ。

このレビューにはネタバレが含まれています。

 そもそも子供を作ることになるシーンで、生き物としての葛藤は無かったのか。夫の死に直面したとき、子供の寿命についての葛藤は生まれなかったのか。母ってそんなに能天気で軽い存在か。自分の関わった命に対して。
 子供が学校に進み、ある一定以上の理解力を備えた時点で、花は何故、子供たちの父親の話をしなかったのか。彼がどんな人生を送り、どんな死を迎えたか。「おおかみこども」には狼の寿命しか備わっていないかもしれない。それでも人に関わらせて生きてゆかせるしかない。その葛藤。それを知った上で、子供たち自身はどんな人生を選択するか。そこが一切描かれていない。「命」の捉え方が甘すぎる。
 都市の中でシングルマザーが直面する子育て、都会から越してきた母子が田舎の人間関係にどう馴染むか、学校では子供たちが互いにどんな関わりあいを持つのか、各々の要素は新聞やニュースで掲載されない日が無いほど、本質的で深い問題を孕んでいる。そこに「なんとなく優しい人々」を空気のように配置する。物語が問題との直面を避けている。
 爺さんが助言したからと言って、人手も無いのに素人の女手一つであれ程の畑は出来ないだろう。屋根の修理も同様だ。「助けを求めて関わりあう」こと自体の大変さと真摯さを描かずに素通りしている。この題材を背負うには、視点と語り口が脆弱すぎる。見ていてハラハラするのはストーリーのおかげではなく、物語の基礎が不安定な所為なのだ。
 おおかみこどもだからこそ克服できた「人間としての危機」も描かれていない。おおかみこどもならではの「発見」や「提案」が無いのだ。既存のコミュニティから外れた存在だからこそ、人間社会の陥穽を見抜く感覚があるはず。そこも一切無い。単に可愛いアウトサイダー。
 ラスト近く、狼としての生を選んだ雨が山に旅立つ朝のシーンは壮大で素晴らしい。しかしそれだけでは、この映画の甘さは埋めきれない。

Daisuke O-oka
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VTRディレクター
7

幸せイメージの洪水

都会の風はつめたい。理解なき人たちの視線は脅威だ。誰にも相談できない。生きていく糧が必要だ。すべてを背負って生きていく自信がない。

……夫に先立たれ、おおかみこども2人を女手ひとりで育てていくことになった母・花がおかれた状況は相当にヘビーだ。現実に照らし合わせて冷静に考えれば、この状況で生きていくことは不可能とすら思える。しかし映画は、やさしい隣人に囲まれ家賃もタダ同然の田舎暮らし+母は笑顔がモットーの気丈な娘という設定で、実にあっさりと困難を克服させてしまう。

性善説の上にたったこれら設定の数々は「甘さ」として指摘されて然るべきだが、この映画を語る上で実はさして重要ではない。

こんな単純な断じ方をすると怒られそうだが、この映画はいのちの営みや継承という高尚なテーマの前に、日々をたたかうお母さんへの応援賛歌であり、都会暮らしに疲れた大人たちのためのヒーリングムービーであろうとする意図が読み取れる。

映画は大人になった雪のモノローグで綴られる記憶の断片のフラッシュバックという構成だ(主観となるのはモノローグ当人ではなく母という不思議な構成だが)。ゆえにそれぞれの記憶は美化され、終始奏でられる美しいメロディに彩られてノスタルジーを喚起し感傷を誘う。

細田演出がすごいのは、これを確信犯的に2時間全編やりとおすことだ。台詞を排した幸せイメージの洪水と、屈託ない笑顔に腹に響く心地よい笑い声。観客はその世界観を羨み、疑似体験し、そして癒される。そこにリアルな感覚はなく、「サマーウォーズ」で展開されたのと同様のヴァーチャルな世界観だ。

あくまでファンタジーとしての癒しだが、アニメの特性を生かしたこれらのアプローチは魅力に満ちている。多少の甘さや感傷には目をつむって、幸せイメージの洪水に身を委ねたいと思わせる力が、この映画にはある。

芳賀 健
芳賀 健のプロフィール画像
映画ライター・編集
8

雪ちゃんかわいい!

このレビューにはネタバレが含まれています。

 これまでの『時をかける少女』『サマーウォーズ』が虫唾が走るほど大嫌いで、それを褒めている人すら嫌いになりそうなほど嫌だったため、そんな嫌な気分にわざわざなるために映画を見る必要などなく細田監督の映画はもう見ない方針だった。ところが数人の知人と一緒に『桐島、部活やめるってな』を見ようとしたら満席で見れなかったため、時間調整のためにこの映画を見たら、とんでもなく素晴らしかった。

 お父さんの狼が死ぬまでが導入で、ドラマが始まるのは田舎暮らしからと言ってもいいくらい、冒頭はあらすじみたいでドラマがなかった。自給自足と貯蓄の切り崩しで生活しようとは、大学に入れるくらい優秀なのにあまりに情弱ではなかろうか。母子手当てくらい申請すれば大抵の自治体でもらえるだろう。

 しかし、そんな重箱の隅なんてどうでもよくなるくらい子供たちが素晴らしく魅力的で、子育ての喜びを伝えてくれる作品だった。この映画では狼人間なのだが、人間も含めて生き物であり、勝手に生きることを是とする道を示しているところもよかった。

古泉 智浩
古泉 智浩のプロフィール画像
マンガ家

『おおかみこどもの雨と雪』のカラーレビュー

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