メッセージ

2017年05月19日公開
メッセージのポスター
8.4

どんな映画

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フリークレビュー
10

こんな仕事をしてみたい。

イラストレビュー
このレビューにはネタバレが含まれています。

相手はぼんやりした霧の向こうで、ゆるゆると肢を動かす。静かな闇の中で、おずおずと対話が始まる。何もわからない。でもきっとわかり合える。物語の基盤に、圧倒的な「受容」がある。

この映画は「世界はこうあって欲しい」というギリギリを描き出した。いきなり火器で攻め立てたりせず、まずは注意深く観察する。「分かろうとする」。先入観や決めつけを排し、謙虚に淡々と「会話」を繰り返す。その静けさが美しくさえある。あの役割を買って出たい、と痛烈に思う。最高の冒険だ。

「ああいう姿で、こういうことをして、こんな概念をもっている」というところまで、何をどうして持ってこれたのか。作り手の背後にいる科学考証者たちの考えを聞いてみたい。

ルイーズの記憶。娘と自分、夫と自分、自分ひとり、そんな光景は少しくすんでいて、仄かな体温と湿度に満ちている。見事な撮影が「世界」と「自分」の「境界」はこうだよ、と、台詞も言葉もなく示している。ルイーズの記憶は、その瞬間瞬間を慈しんでいて、だからこそ美しく、誰の人生にも打ち替えられる普遍がある。

世界の緊張がルイーズとイアンの研究を期せずして加速させ、相手の感覚をルイーズは身につける。その描き方がまた「ギリギリ」で最高だ。超自然的な何かで相手から与えられるのではなく、相手との会話と言語の解析の中でいつしか身についている。納得して描けるところまでを丁寧に描く一方、答えを無理に描いてはいない。作り手自身が、彼らが作った世界に対して最大の誠意を発揮している。世界は「こうでしかない」のだ。

世界が「こうでしかない」のなら、人生も「こうでしかない」。けれどルイーズの選択はむしろ前向きだ。べき論でも道徳でもなく、シンプルな感覚でその選択が描かれる。ルイーズたちが相手と交信する技と同じアプローチで、作り手たちはこの映画をおれたちに届けている。静かな驚きがしばらく抜けない。

Daisuke O-oka
Daisuke O-okaのプロフィール画像
VTRディレクター

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