森のカフェ

2015年12月12日公開
森のカフェのポスター
9

どんな映画

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フリークレビュー
8

丁寧に休もう。

このレビューにはネタバレが含まれています。

書けない哲学者が森に行く。「こんなの書いたら物笑いのネタになってしまう」と怖れて書き出せない。森に行くのは逃げているに等しい…と見える。会社や仕事で「○○やらねば」で動いている人々から見ればそうだろう。

事前の評で「哲学的…」云々と語られていた。監督個人を存じ上げているので「さもあろう」と思って劇場に赴いたが、感触は決してさにあらず。秋を迎え黄・橙・赤が緩やかに混ざり合う森の柔らかな光。フォークギターの歌声は平易かつ印象的なメロディで心地よく耳に残る。

問い、迷い、疲れる。だから人はカフェに寄る。そこで渇きを癒し、気分をほぐし、誰かと出会い、おしゃべりに興ずる。けれどカフェで寝起きする人などなく、いつしか人はカフェを出て「居場所」を目指す。

何が起こって彼が書けるようになったのか。これはもう一度観てみないと分からないくらい、微妙な段差でしか描かれていない。しかし、現実はきっとこれくらいの段差なのだ。休み、動き、また倦んで休み、そして動き、それを繰り返す。そのループに内在する問いが在ること、そのものをこの映画は「よい」と肯定している。

そんな優しさ(易しさ?)があるから、哲学的な味付けにもついていける。あの黒帽子の男や、ギターの女のそばにいるもう一人は、いったい誰で何なんだ? 監督自身は確かな答えを持ちつつ、その答えを観客にゆだねる距離感を備えていて、感嘆する。過剰な説明を排して「彼らをそこにいさせる」ことが、観る側の感覚を励起して、心地よい問いを抱かせる方向に機能している。

休むなら丁寧に休もう。
そう思わせてくれた、稀有な映画だ。

Daisuke O-oka
Daisuke O-okaのプロフィール画像
VTRディレクター

『森のカフェ』のカラーレビュー

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