リトル・フォレスト 冬・春

2015年02月14日公開
リトル・フォレスト 冬・春のポスター
8.5

どんな映画

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フリークレビュー
10

食べたい。食べさせたい。

このレビューにはネタバレが含まれています。

前作の冒頭で霧となっていた「水」は、今作で「雪」となって世界を包む。冷たく重く、より厄介な相手だ。外で作ることができない冬、保存していた食料をどう生かすかが焦点になる。

いまそこの土から採ってきたもの。採ってからしばらく保存していたもの。どちらが生きていてどちらが死んでいるのか。いち子(橋本愛)が、料理して食べる。食べることで食べられる命も生かされる。二色のケーキも、湯気を立てる納豆餅も、その中で沢山の何者かが生きていて、それがまとめて口から入ってくるのだ。

そんな食べ物で培われたいち子の身体が素晴らしい。パンを割る指先、そこから戻る健やかな腕は、しなやかな体幹で支えられた胴体につながっている。日々雪をかき、薪を割る仕事と、育て醸す時間をかけた食べ物が、健やかないち子を作る。

いち子が見上げる空が割れている。真っ黒な雲と真っ青な空に。「これはいまの私だ」と呟くことそのものが健やかさの象徴だ。病んでいる自分を捉えて向き合い、取り組むことそのものが健やかさなのだ。

生きるにも向き合うにも身体が要る。作物は土の上から人間を向いている。水や光でさえそれぞれの「身体」で、それらに取り囲まれて思ったり考えたり働いたりすることは、凡事であり奇跡でもある。

その瞬間その瞬間、何が画面の主役なのかを徹底して考えて引き算を重ねた画角と音には、前作に引き続き感服。膨大な撮りだめ、光狙いの一発テイク、芝居を返して撮り直し、自然と食べ物という制御できない2つを相手にした粘り強さ。それが、観るだけで「美味しい」映画を作り上げた。

フードディレクションを務めたeatrip!には「ディナーで行きたい」とせがまれて行った事がある。その相手のことを思い出した。彼女にこの映画を観せたい。この映画のような世界で、一緒に身体を動かして、食べたい。食べさせたい。

外は寒いから、家の中で、湯気たてて。

Daisuke O-oka
Daisuke O-okaのプロフィール画像
VTRディレクター

『リトル・フォレスト 冬・春』のカラーレビュー

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