イロイロ ぬくもりの記憶

2014年12月13日公開
イロイロ ぬくもりの記憶のポスター
9.5

どんな映画

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フリークレビュー
10

そこに映画が起こす本物の共感がある

四角い画面の中に物語を構築するのが映画、じゃない。
広大無辺なこの世界のどこを四角く切り取るか、その位置取り、位相にすべてを語らせる。そこには揮発した人生が、濃縮された気持ちが漂っている。世界はいつも画面の外に広がっていて、我々はただ、切り取られた画角の中に目を凝らし、物語を見つけているだけ。

この映画の四角い画面は、シンガポールの中流家庭にくすぶるクソ生意気な少年の人生の、ほんの数ヶ月を切り取る。そして、やはり世界は外側から画面の中の人生に干渉する。

我が物顔で無秩序な自転車は画面の外から飛び込んできた車にはねられる。周りを見ようとしない少年の特性が浮き彫りになる。
画面の外からベッドに放り込まれるバッグの乱暴さは絶望を表す。追って画面内に倒れこむ母親を見てその絶望の主を知る。
テレビのニュースが画面に映ると、その画面の外側で愕然としているであろう母親が気になる。そのうち画面は母親を見やるが、顔にパックをしている母親の表情は見えないため、「蒼白」にも見えるパックの下の表情に想像が巡る。だからパックがむしり取られた時の母親の表情に、観客はここぞと目を凝らす。
歪み始めた家族が外の世界から来た外国人メイドの存在に反応する。滞った家庭がわずかに共振する。メイドは少年と感応し合い、ほんの0.5ミリ躍動するが、やがて当たり前に別れの時は来る。

こうして画面の境界で、外と内との往来に目を瞠りつづける2時間弱。だからこそ、ついに外へ出て行くメイドに対し、メイドを内に留めたい少年が、画面の外から手元のラジオに有効な情報を受信しようとする「交差」に、それまでの2時間弱がぎゅっと濃縮される。

メイドが去ったことを嘆くのではなく、メイドを見送ることで少年の意識が外側に拓いたことを祝いたい。そしてその外に広がる世界は我々とつながっている。そこに映画が起こす本物の共感がある。

田中 啓一
田中 啓一のプロフィール画像
娘と添い寝

『イロイロ ぬくもりの記憶』のカラーレビュー

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