ゴーン・ガール

2014年12月12日公開
ゴーン・ガールのポスター
8.2

どんな映画

まだ投稿がありません。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
フリークレビュー
8

闇が深い

このレビューにはネタバレが含まれています。

結婚で恋が終わって憎しみが始まる、悲しい話であった。

 夫婦は「お互いに支配し合う関係」という言葉がこわすぎる。エミリーが頼った元カレが、人のリモコンを勝手に奪うような、他者を尊重する気持ちに欠ける人物で、しかしそんな面はエイミーにもあり、「こいつ自分よりやばい」と思って殺したのだろうか。殺せばうまく辻褄が合って元の家に戻れると計画を立案したのだろうか。その計画立案が、ニックの記者会見の後だか前だか忘れてしまったのだが、だとしたらサイコパスであり、理論が独自すぎるので何を話し合っても無駄で、こわすぎる。

 エイミーは聡明で、そんな自分自身も嫌だと思うのだが、それでもそうしてしまうほど人格の根っこの部分の闇が深いのだろう。

 冒頭の恋の始まりの会話も非常に嫌ったらしくて、主人公なのになんかこの人たち好きになれないな~と思っていたらやっぱりそんな感じだった。また、タイトルで「ガール」と言っているけど、けっこうな年の女で「ガール」はないと思っていたのだが、ガール扱いをいつまでもされたい厄介なタイプの女で、タイトルに偽りはなかった。

 エイミーは誰よりも自分が一番賢いと思っていて実際賢くて、周囲の全員を見下して夫も見下して友達もいない。そんな彼女であっても純粋にニックを好きであった時期はあったはずで、かつてのレイプ犯に仕立て上げた恋人にも純粋に恋をしていた時期もあったはずだ。しかしそれ以上に自分自身が好きで、自分の思い通りにならない相手を憎み始める。

 エイミーはあれほどの計画を周到に準備して遂行するのはきっと楽しかったに違いない。それが人を陥れるものだとしても、それが計画通りに運んで世間を手のひらの上で転がすようなことが成功してさぞワクワクしたことだろう。金を盗られた時はざまあって感じだった。あの強盗が、元カレの殺人の遠因になっていると思うと、世の無常と無情を感じる。

古泉 智浩
古泉 智浩のプロフィール画像
マンガ家
8

裏「危険な情事」。

今、彼氏や旦那の浮気を疑っている方は、まずDVDで「危険な情事」を一緒に観て、さらにこの「ゴーン・ガール」にお誘いしてはいかがでしょう。
その後、彼氏(旦那)の動向に変化があると、おもしろいですねー。

好きか嫌いかは置いといて、映画としても「おもろ怖い」上質なエンタメになっています。
少なくとも、140分越えを最後まで観せ切ってくれる。

このシーンを観ただけで、デヴィット・フィンチャーのそれと分かる、恐ろしく美しく描かれる性暴力シーン。
ロザムンド・バイクの聡明さが、さらに恐怖を盛る。

割り切った関係を望む都合のいい女は、そうそう都合よくいないということ、
さらに、その女が本気で割り切ってしまったときには、どえらい目に遭うということ、
そして、そのときには、「愛」と呼ばれるものはみじんも残らないことを、
知っておいてもいいかもしれない。

ラストに映される、うなだれたベン・アフレックの姿が、それらすべてを饒舌に物語っている。

茅野 布美恵
茅野 布美恵のプロフィール画像
会社員
9

フィンチャー版「新婚さんいらっしゃい」。

このレビューにはネタバレが含まれています。

好きな女の頭が好きだ。ちゃんとした女の清潔でしなやかな髪。きゅっと締まった頭殻。掌をふわりと置くと馴染む温かさ。頭を撫でたり、かき抱いたりする行為は(おれにとっては)愛を確認するのに必須の行為だったりする。

冒頭はそんな1カット。ニック(B.アフレック)の独白もツボ。そしてエイミー(R.パイク)の目。「恋人同士は手に手をとって飛び降りても、絶命する瞬間まで相手が誰を思っているか分からない」と有名な作家が何かに書いていた。恋人や伴侶との数え切れないやり取りの中で、相手を信じることと自分を信じることがブレンドされていくのが、(事実婚や同棲も含めた)結婚なんだろう。

熱い時期は過ぎ、倦怠が嫌悪を生む。そんなときは徹底して自分を変える、その末に相手さえも変えてしまう。それがこの物語のエンジンだ。エイミーの「変わる」はある意味限りない可能性で、ここまで女は賢く鋭くなれるのかと舌を巻く。その一方でニックは自分を変えることなどできず、一番「自分らしい」自分で状況に挑む。

「自分らしくある」のは「自分だけで出来ること」ではないという本質…周囲の視線が自分を形作るという社会的本質を、虚実あるサスペンスに読み替えた。このツイストが効きまくり。「失って初めて、何が大事だったのかが分かる」という映画のキャッチコピーもここにつながる。ニックが失ったものは何なんだ?という強烈な問いは、伴侶ある全ての人々に共通して刺さるのだ。

キャッチコピー、"She"の流れる予告編、そして本編、一連に画と音楽の完全なスタイルを帯びさせた物語にオトナたちを引き込む、これぞストーリーテリング。平和であるはずの「結婚」が虚実の境界を人生かけて走る本質を伴う、これぞスリル。いろいろあったけど夫婦になりました的ジェットコースターの超極端アドレナリン版。この作品が興行トップに躍り出るアメリカの成熟には強烈に嫉妬する。

Daisuke O-oka
Daisuke O-okaのプロフィール画像
VTRディレクター

『ゴーン・ガール』のカラーレビュー

こんな作品もレビューされてます

クレイジー・リッチ!のポスター

アジア版『ブラックパンサー』

 大旋風である。ワーナーブラザーズの製作ながらオールアジア...

クワイエット・プレイスのポスター

声をあげよ

 『クワイエット・プレイス』は全編に渡って集中力の漲った素...