リトル・フォレスト 夏編・秋編

2014年08月30日公開
リトル・フォレスト 夏編・秋編のポスター
8

どんな映画

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フリークレビュー
10

生きるための仕事。

このレビューにはネタバレが含まれています。

自転車で峠道を行く自転車を、追うカメラ、霧に包まれる山村。それだけで心を掴まれる。撮影と録音は、観客をその「世界」に置くため丁寧に練られている。水は命の象徴で、それが霧となり湿気となっていち子(橋本愛)を悩ませる。このエピソードを冒頭に持ってきたのは大正解。制御できない生命の象徴として、湿気はカビを生み、いち子のシャツを一面汗に浸すのだ。

自分で作った作物を自分で収穫し自分で調理して自分で食べる。速さを意識させないカット運び。引き算を重ねた音。手仕事に手仕事で向かい合う誠意が見える。

羨ましくもなるけれど、日々の労働は相当タフなはずだ。チェーンソーを駆って薪を割るいち子の身体には、儚げに見えてしなやかな芯が通っている。橋本愛が適役だ。滲む汗、その奥の肌は輝いている。深い瞳、それを囲む白目は幼子のように青みを帯びている。資質としての肉体が、自給して自然を食べて身を養う若者を、表現する説得力になっている。

流行ではなく、求道でもない。「生きる」上で数ある選択肢の一つ。ユウ太(三浦貴大)の「右から左へモノを動かしてる人間ばかりが偉くなる」という言葉が刺さる。彼らのように生きたいと思う素直な心と「甘くねえぞ」という叱咤が心中でぶつかる。

それでも、いち子が見上げる空、見下ろす地面、毟る草、締める合鴨、うろつく猫にいたるまで、銀幕から風と匂いが来るほどの臨場感。夏の終わりの夕暮れは総毛立つほど美しい。無邪気に憧れるところから始まってもいいんだろう。トマトにかぶりつき、米をかきこむ咀嚼。生々しさと健やかさの境界線を突いてくる。「食べたく」なる。

屋上の植木鉢でオリーブを育てているだけで気分がいい。そんなおれなので、普通の都会人が観るより感じるものは多いかもしれない。それでもオススメする。何度でも観たい。もちろん続編も。こんなに潤いと豊かさに満ちた映画があるなんて驚きだ。

Daisuke O-oka
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VTRディレクター

『リトル・フォレスト 夏編・秋編』のカラーレビュー

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