アクト・オブ・キリング

2014年4月12日
アクト・オブ・キリングのポスター
8.5

どんな映画

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フリークレビュー
10

人間は表層の常識を演じているのか

とある家屋の屋上。白いコンクリートが打ちつけられた無機質なこの場所で、男はかつて人を殺したと得意げに話す。「最初は殴り殺していたが、血が飛びちるから針金で首を絞める方法に変えたんだ」。効率のいい殺し方を発明したから褒めてくれと言わんばかりの得意顔。観客はこの男に狂気を見る。

しかし、冒頭のそれが男の狂気ではなかったことが次第に明らかになるにつれ、この映画が訴える本当のおそろしさを知ることになる。殺人行為を正当と疑わず、むしろ過去の栄光と位置づけ平然とする男。それが大きな間違いであることになぜ男は気付かないのか。

なぜなら男は“口実”を持っているからだ。こういう理由があるから殺してもいい。口実という絶対的な許可証を手にしたとき、男は別人格をつくりだし、殺人という非人間的な行為を“演じる(アクト)”ことを許されたのだ。

そして、殺人の実行者という非道を演じてきた男が、劇中で自らの過去を演じるメタ的な状況におかれたとき、はじめて自身の行為そのものを見つめ直すことになる。映画の終盤、冒頭と同じ白いコンクリートの屋上で男が見せる悔恨と絶望の表情は、裏を返せば、その当たり前の感情を包み隠してしまう心理メカニズムの危うさを露呈している。

人間は、悪と定義されることを“知って”いる。しかし一方で、正当性さえ与えられれば、その定義を覆すこともできる。それは常識という名の表面的なもので、本質的なものではないからだ。知識として知る悪を、人間は別の人格を演じることで実行できると映画は訴える。

人間の本質、深層を知ることがこれほどおそろしく感じたことはない。自分やその周辺にそんな本質が潜んでいると思うと、それが表面化しない常識世界が保たれることを祈るばかりだ。

芳賀 健
芳賀 健のプロフィール画像
映画ライター・編集
7

演じているのは、誰だ?

このレビューにはネタバレが含まれています。

このドキュメンタリーのメイン対象となるのは、インドネシアの大量虐殺の加害者の代表である男アンワル。
彼の「変化」については、多くの批評やレビューですでに語られている。
確かに、彼の変化と最後の「えづき」には、人間の「恐ろしき順応性」を見せつけられ戦慄させられる。
それを理解したうえで私が一番強く感じたのは、「演じる(アクト)」行為が意味することだった。

「加害者である彼ら」は、自分たちが人を殺したことを罪と認識することなく、虐殺する自分を演じる。
一方、共産主義者とされる「被害者である彼ら」は、「状況を知ったうえで演じざるをえない日常」を送っているのだ。

劇中、加害者たちから演技指導で圧力をかけられたとき、被害者たちはリアルに抵抗し涙を流す。
この瞬間、とっさに演技が解かれるのは、彼らが「その恐怖」と自らが置かれた状況を理解しているからだ。

エンドクレジットでロールアップされる「アノニマス(匿名)」の連発に、「彼ら」の事情を痛感する。

演じ続けてきた者たちと、自らを演じて初めて真実と対峙した者たち。
この構図は、きっと他国のみの出来事ではなく、国レベルのみの出来事でもない。
人間のひとつの性(さが)ともいえる問題に、どう対処すべきなのか、問われている気がしている。


※実は、鑑賞中に何度かウトウトしたため、
・点数は暫定
・内容は覚書
といたします。
ウトウトしたのが花粉症のクスリのせいなのか、映画の内容のせいなのかも含め、上映期間中に再見できたら、改めて書くかもしれません。

茅野 布美恵
茅野 布美恵のプロフィール画像
会社員
10

これはヤバい

マジで色々ヤバい。
プルマン(ヤクザ・ギャング)達を追っている点でまずヤバいが、
彼らが虐殺の時代を嬉々として語り、
それを映画化として再現するという構成もヤバい。

そして彼らが栄光の過去を語る序盤、
あまりに自分の価値観と剥離しすぎて不意に笑ってしまうが、
彼らが至極真っ当に語り続ける様を観るにつれ、どんどん怖くなっていく。

ドキュメンタリーは視点が命。
フィクションでもそうだけど、
今作を観れば尚更そう思わざるを得ない。

観終わって唸ったのは、今作があまりに多くの示唆に富んでる点に
気づいたからだ。沢山あるが、
「映画(フィクション)の持つ力」までここで実証するとは。
絶妙のタイミングで監督が被写体に投げる一言。

当時を知らない子どもたちの本能的な演技を目撃し、
恐怖はまだそこに根付いているのだと知る。


改めて思う、
相手の立場に立って物事を考える事の難しさ。

法律と教育は勝った者が作り上げるものだ。

完山 京洪
完山 京洪のプロフィール画像
映画人
7

怖かった

このレビューにはネタバレが含まれています。

 もっとエキサイティングなものを予想していたらけっこう地味で退屈だった。町山智浩さんの解説の方が面白かった。

 おじいさんが50年前の自分の罪に気づいて、吐き気を催す場面が本当に苦しそうで迫力があった。

 インドネシアの民兵組織の制服がオレンジと黒の迷彩柄という毒々しいもので、特撮ヒーローものだったら絶対に悪の軍団だ。彼らが虐殺の再現をする場面は本当に悪そうだった。

 太った男が女装させられたり、完全におもちゃにされていた。彼が調子に乗って選挙に出て落選したのは面白かった。

 軍が政権を握るといろいろと良くない感じがした。インドネシアは近年『ザ・レイド』やシラットが注目されているのだが、深い闇を感じた。

古泉 智浩
古泉 智浩のプロフィール画像
マンガ家

『アクト・オブ・キリング』のカラーレビュー

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