アデル、ブルーは熱い色

2014年04月05日公開
アデル、ブルーは熱い色のポスター
8.4

どんな映画

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フリークレビュー
9

実存(=映画の中のリアル)が本質(=映画のテーマ)に先立つ

冒頭、教科書を朗読する生徒たちの表情をカメラはひとりひとり凝視する。不自然なまでのズームで人間の顔を捉えるそのスタイルは、3時間近い長尺の最後まで続く。会話劇の最中にも対話する人間同士が同じフレームにおさまることなく、カメラはひとりの表情だけを無骨に追い続ける。

これは劇中の台詞にも登場するサルトルが唱える“対自である人間”の示唆だろう。“実存が本質に先立つ”なんて説明ではまるでピンとこないが、“人間とは自らが行動によってつくりあげるもの”という説明を聞けば、個人に粘着するカメラの意味を理解できる。

実際、吸い付くようなカメラを前に台詞を吐く登場人物たちは、まるで届くアテのない相手に独りよがりの思いを響かせているように見える。言葉は互いを理解し合うためのものではなく、自己を形づくるための手段と言わんばかりだ。

そんな中、映画がふいに対話する2人を同じフレームにおさめる瞬間がある。1度目はアデルとエマがバーで出会うシーン、そして2度目はホームパーティーでアデルとアクション俳優の男が話すシーンだ。ロマンチックな解釈をすれば、この瞬間は言葉が互いを理解し合うためのものとして機能する運命の出会いを示唆していたと深読みできる。するとアデルに訪れるラストシーンは、“人間は自分をつくりあげる自由に囚われる”というサルトルの思想に基づく、なんとも苦く切ないひとつの人生観を浮き彫りにするのだ。

…とまあサルトルや実存主義の本質(ややこしい)をきちんと理解もせずに後付けの理屈をこねる前に、この映画は感性に訴える有無を言わさぬ力強さを持っている。2人の主演女優が見せる感情の爆発と名匠アブデラティフ・ケシシュの本能を切り取るカメラは、今そこにいる人間をまざまざと見せつける。それはまさに“実存が本質に先立つ”かのような映像マジックだ。

芳賀 健
芳賀 健のプロフィール画像
映画ライター・編集
10

二人に出会うための映画

このレビューにはネタバレが含まれています。

「seesaw」を作る前に理想としていたほとんど全てが
この作品にあって、それはもう嫉妬以上に安心とか確信みたいなのを
3時間感じながら凝視していた。

人間を追えば物語は付いてくるという僕の哲学に近い妄信を
この監督はアデル・エグザルコプロスとレア・セドゥという二人の
素晴らしい最高の女優と出会う事で叶えていたように思う。
とくにアデル。彼女の存在だけで2時間は余裕で持つよ。
全く飽きなかった。彼女を見つけた事で既にほぼ成功していたんじゃないだろうか。

技術的な事で言えば、役者の動きを一秒たりとも逃さないようにするには
会話シーンに2カメは必須だと改めて思った。
ドキュメンタリータッチという言葉が近年流行の一つではあるが、
レビューの多くに引用されている写実主義的なアプローチは手持ちの長回しという形がリアリズムを表現する上でマッチする事を改めて証明した。また、前半のほとんどを顔のクローズアップによる会話で物語を進めているのも、言葉や表情が人間を形作るという事を監督は伝えている。

SEXは度々出てくる食事のシーンと同じレベルで重要であり、
大事なのは脱げるかどうかで無く、何を伝えるかであり、撮影や録音や美術や衣装や音楽と同じく俳優は伝える手段の一つ。
監督がこの作品を高みに押し上げる努力をアデルが強力にサポート(楽に)しているのは間違いない。

理想的な髪の乱れ方だった。染まり方だった。食べ方だった。寝顔だった。
全てが役と同化し、スクリーンから感情が溢れ出る。
3時間も長くない。

物語に目新しい所は無い。
ただ近年ラブストーリーにおける定番の設定の逆転(男女)も
飽和状態になりつつある中、この作品は静かに同性という新定番の到来を告げている。

海に飛び込んだ所で終える事も出来ただろう。
でも監督は現実の「もしも」の後を見せた。

あと子どもたちが可愛過ぎる。

完山 京洪
完山 京洪のプロフィール画像
映画人

『アデル、ブルーは熱い色』のカラーレビュー

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