LIFE!

2014年03月19日公開
LIFE!のポスター
7.7

どんな映画

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フリークレビュー
9

生まれ変わるんじゃない。拓くんだ。

「生きてる間に、生まれ変わろう」
この映画のキャッチコピーは、ちょっと違う気がする。
主人公のウォルターは、変わってはいない。

自分が冒した仕事のミスをカバーすべく、連絡の取れないカメラマンを追って旅に出るウォルター。
連絡がとれないネガティブな状況が、逆に彼を拓かせる。
世界は広がる
変わらない彼の誠実さや実直さが、広がった世界を輝かせる。

何より心に迫るのは、妄想を続けていたときの彼を否定していないことだ。
むしろ、そのときの彼が「LIFE」の最後を飾るのだ。

著名なカメラマンを相手に、「表紙に使う写真を、どうしてそんな扱い方をするんだ!」と意見するウォルター。
それに、「悪かった」と素直に返すカメラマン。
なんてまっとうで、尊敬すべきやりとりなんだろう!
カメラマンを演じたショーン・ペンの魅力は、もう述べる必要もない。
パーフェクト。

「LIFE」最終号の表紙に起用された25番の写真は、見方によればベタかもしれない。
けれど、その光景を「美しい」と感じて撮影者がシャッターを切った瞬間が感動的なのだ。

そして、ウォルターが恋するシェリルを演じたクリスティン・ウィグがすばらしい。
ウォルターの背中を押すかのように歌う彼女の、空を仰いだ表情に目と心を奪われる。
彼が彼女に恋した理由が、言葉を超えて理解できる瞬間だ。

ベン・スティラーには、女性的感性が備わっているのか、もしくは女性を理解しているのか。
とにかく、モテ男なのは間違いなさそう。

茅野 布美恵
茅野 布美恵のプロフィール画像
会社員
9

さて、どんな旅に出てみようか(近場でも可)。

主人公は「夢想にふけりがちな男」。
大抵の映画で肯定的に描かれる王道のパターンだ。
根底にあるのは「想像の世界が豊かな人は奥が深い」という考え方で、
ヤッカミ半分で言わせてもらうなら
クリエイティブな人間たちによる選民思想でもある。

それはそれで魅惑的だと認めつつ、
『LIFE!』のウォルターは決してクリエイティブな人間じゃない。
その証拠に、劇中で何度もビジュアル化される夢想は、
どれも壊滅的なほどありきたりで、二番煎じでダサい。
ウォルターの取り柄は想像力でなく
地に足の着いた、天性の実直さや優しさなのだ。
ただ、自分に課した責任や不器用さゆえの息苦しさから
夢想を逃げ場にして毎日をやり過ごしているのだ。

だから『LIFE!』は、かつてのティム・バートン映画のような
はぐれ者や異形の物語にはなりえない。
アーティステックな才能が開花してよかったね式の
ありふれた感動話でもない。
確かにウォルターはとんでもない冒険を体験するけれど
それでも最後まで、凡人の、凡人のための映画なのである。

ウォルターが会社から飛び出す場面で(涙を禁じ得ない瞬間のひとつ)、
背景にはLIFE誌の表紙を飾った偉人たちの写真が映る。
ウォルターが偉人の仲間入りをするからではない。
彼らの存在に鼓舞されて、自分の小さな人生のために走り出すのだ。

本作が映すグリーンランドやアイスランドの景色は素晴らしい。
が、不思議と実際に見に行こうとは思わない。
それはたぶん、この映画が、すべてのひとにとって
それぞれにふさわしい旅があるのだと教えてくれるからで、
遠い近いにかかわらず、自分は自分なりの旅をすればいいのだ。

しかもベン・スティラーは明確に、
個人が踏み出した程度で世間は変えられないと描いてみせた。
ただ、少なくともひとりひとりが生きやすくなれるなら、
この世界だって変わるだろう。きっと。

村山 章
村山 章のプロフィール画像
映画ライター
10

ラストシーンの直後、ぼろ泣き

「ラストは号泣」的な宣伝やキャッチコピーは数あれど、
実際に泣いた事なんてほぼないです。
オープニング直後から泣いた映画もあったりしますが。

夢や目標があって、もがいている人間なら
程度の差はあれ、この作品が示す肯定さに喜び感謝せずにはいられない
のではないでしょうか。
僕はラストにぼろ泣きし、応援とも救済ともとれる
この映画のメッセージに特別に勇気をもらいました。

TVCMの煽り方に敬遠している人がいたら、お勧めします
ベン・スティラーです。大丈夫、塩梅が絶妙。

興味が湧かない人、お勧めします。
この映画は君を置いて行かない。

ベン・スティラーは「リアリティ・バイツ」「ズーランダー」など
傑作が多過ぎます。昔、「氷結」のCMで喜んだのは僕だけではないはず

完山 京洪
完山 京洪のプロフィール画像
映画人
8

よかった

このレビューにはネタバレが含まれています。

つまらない日常を送っている冴えないサラリーマンが空想の世界にひたっているうちに、いつしか空想世界でヒロイックに活躍していた主人公は日常の現実でも勇気を持って一歩を踏み出すようになる……といったような話を予告を見て想像していた。ところが、いきなり会社は大変な感じになっていて、全くつまらない日常ではなかった。主人公の空想壁はむしろ現実逃避みたいなものだった。

 そして、仕事は地味だとしても一流誌に17年も勤めるほどだし、少年時代はモヒカンでスケボーの名人であり、冴えないサラリーマンでもなんでもなく、高スペック人間だった。

 25番のフィルムを探す大冒険が始まるのは、カメラマンのちょっとした悪戯心だったのだが、それってあんまりじゃないかと思った。ショーンペンかっこよかった。

 しかし、その25番の写真は日常の頑張りは誰かが見ていてくれているというメッセージで感動して思わず涙が出た。

 予告を何回も見るうちにどんどんつまらなそうな気がして見るのに気が引けていたけど、見てよかった。素晴らしい映画でした。

古泉 智浩
古泉 智浩のプロフィール画像
マンガ家
9

積み上げてたから、飛べる。

このレビューにはネタバレが含まれています。

独立やら転職やらがWEB界隈でトンマナになっている。煽る人々の一方で、諌める人々も増えている。自分は本当に「自分」なのか。このテーマはメディアを通じて、こじれる一方だ。人生やキャリアにこじらせ感満載のおれたちに目掛けて、この映画は作られた。

妄想がイチイチ陳腐でダサい。そんな妄想を数多く思いつく自分に重なってイタい。一方、注目すべきはウォルター(ベン・スティラー)と家族の関わりあいだ。彼にとって足枷にしかならないような老母や妹は、実は彼に未来へのヒントを与えてくれる。そして同僚ヘルナンド(エイドリアン・マルチネス)の実直な存在感。たゆまぬ日常こそが未来への階段。妄想などしている暇が無くなるところまで、あるある感満載だ。

17年ネガ管理を務め、無くしたことは一度もない、その矜恃。最後の仕事を全うすべき義務感。憧れの女を前に自分を変えたい渇望。そして世界の果てで活躍するまだ見ぬ盟友への思い。どれか一つでなく、全てが映画の中で醸成されて、いつの間にか彼を「冒険」に押し出す。この流れがいい。人生に、事前に分かる契機などない。仕事にも家族にも真摯に日々を積み上げてきたからこそ、一歩踏み出せば「そこ」に届く高みに来ていて、あとは「踏み出す」だけなのだ。

25番目のネガの中身。これしかない。そしてその謎に絡んだオコンネル(ショーン・ペン)の「ごめん」がニクい。このいたずら感を込めた脚本の温かさは、なかなか真似できない。本当の「仕事」の中で経験した人間の機微がある。そしてこの映画は彼に全能のハッピーエンドを与えていない。彼の恋路は?再就職は?そして本当に成し遂げたい夢は?すべてこれから。そこを描かずしてこの多幸感と充実感を表現できる語り口が絶妙だ。

おれはこの歳になっても、下手なクセしてスノーボードにこだわる。映画への夢を追い続ける。きっとどこかで繋がる。この映画、もう一度観る。

Daisuke O-oka
Daisuke O-okaのプロフィール画像
VTRディレクター

『LIFE!』のカラーレビュー

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