ウルフ・オブ・ウォールストリート

2013年12月20日公開
ウルフ・オブ・ウォールストリートのポスター
7.5

どんな映画

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フリークレビュー
9

欲望の果て

このレビューにはネタバレが含まれています。

 大金持ちになったら何をするだろうとよく考える。この映画は巨万の富を得たディカプリオが何をしていたかというと、ヤクをやってセックスをして豪邸に住んでボートや車を所有して、仕事をしていただけだった。その中で何が一番楽しそうだったかと言えば仕事して金をもうけることで、ヤクでギンギンにテンパって更に仕事している様子がとにかく楽しそうだった。

 何かを買うためのお金を集めることが目的になって言わばお金中毒だ。会社が大きくなってどんどん成功していく様子が楽しそうだった。結局そこが一番楽しくて、その先はないのかもしれない。

 人間の欲望の果てには何があるのだろうか、常々考える事だが、その先を見せてくれる映画には出会ったことがない。最終的には虚しくなったり逮捕されたり死んだりといった破滅がある。その過程にしか喜びはないのかもしれない。

 この映画はそれほど極端な破滅はなく、収監されたもののそこそこ楽しげに終わる。

 行き着く先には何もない、かと言って目的なしに生きるのもつまらない。成功を目指してその過程を四苦八苦しながら楽しむしかないのかもしれないと思った。

 奥さんに隠れてセックスを楽しんだり、お金をいかに隠すのか工夫を凝らしたり、ボロ株を電話で売りつけようとしたり、ヤクをきめて演説したりとにかくエネルギッシュに何かやっている様子が、何をやっていても楽しそうだった。ヤクの禁断症状など負の側面は特に描かれなかった。

古泉 智浩
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マンガ家
5

残らない。

このレビューにはネタバレが含まれています。

ジョーダン(レオ様)が年収490万ドルも稼いでいるのなら、もっと他のことに興味持ってもいいのになと単純に思う。それが女・高級車・クルーザー・酒・ドラッグで、観たような聞いたようなネタばっかり。既視感と満腹感を「カネ万歳」価値観へのアンチテーゼにしようという気持ちは判るのだが、3時間もかけてひたすらそれだけ。欲望が満たされれば幸せってわけじゃない、というテーマなら過去にゴマンと映画化されてる。

同じようにお前は稼げるのか。そう聞かれると「無理っす。すごいっすね」なんだけど、ドラッグやパーティをひたすら見せられるほどに「小ささ」が際立ってくる。エサを追いかけて回し車で走るネズミと変わらない「小ささ」なのだ。日銭を追う人間もネズミ。カネは人間をネズミにする。地下鉄の車内のシーンが痛い。

実際にリッチなレオ様が、実在のリッチな悪徳を徹底して演じることも、3時間の尺を徹底して爛熟と転落のみで描くのも、ラストの1コマまで「カネ中毒」になってしまう人間の欲望を描くため。実に身体を張った、映画という存在への奉仕だ。

とはいえ、カネ儲けに狂って当局に目をつけられる人物は国内外に多く実在していて、その内実も様々な視点で伝わってきている。ちょっと時代が遅すぎた。ドラッグやセックスの向こうにあるジョーダンなりの正義が見えない。発見も無い。無いからイイのかもしれない。虚飾のオトコを映画化するに際して映画も虚飾を徹底した。その結果本当に空っぽな映画に仕上がった。見事なまでに何も残らない。

こうなると同様に興味深いのは「冒険投資家」として名高いジム・ロジャースだ。夫婦でデカいバイクを駆って世界中を回り、様々な国々に飛び込むことでどの国のどの企業に投資するかを決めていくという。本は読んだ。彼の旅を映画で観てみたい。誰か仕掛けてるかな。

Daisuke O-oka
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VTRディレクター
6

スコセッシとディカプリオの温度差

冒頭からノリのいい既成曲をBGMに破天荒なキャラクターたちが躍動する。ストップモーションに超速ズーム、そこにディカプリオのモノローグがかぶさって、「グッド・フェローズ」の出来上がりだ。

映画界の至宝マーティン・スコセッシは、カネと欲にまみれた現代アメリカの病そのものを体現する男の物語を、たくさんの引き出しからちょっとずつノウハウを取り出して上手い具合に調理してみせる。冒頭の「グッド・フェローズ」焼き直しを思わせる演出から、「アビエイター」に「ディパーテッド」、果ては「ケープ・フィアー」まで思い出を遡って、過去の遺産でつくりましたとばかりの手練手管を見せつける。

画作り、演技、全体のテンションは過激そのものだ。一見すれば狂気と見紛う露悪的な病魔がそこにあるように見える。しかし、どうにも小手先の器用さが見え隠れして、スコセッシ自身の創造的欲求が浮かび上がってこない。スクリーンからわき上がるのは、やはりレオナルド・ディカプリオという希代のカリスマが自身のアイドル像を破壊し、時代の発信者でありたいと願う強い強い欲求だ。

誤解のないよう断っておくが、この強すぎる自我の押しつけは嫌いじゃない。ディカプリオという類いまれな個性からこそ生まれ得た映画と言っていい。ただ、スコセッシがこの映画を監督する必然性は果たしてあったのか。むしろ映画の常識をブチ破るような恐れを知らぬ若手を起用していたら、もっと面白い方向に転がったのではと想像してしまう。

3時間という長尺でひたすら人間の品性を疑う描写を見せつけられながら、それでも“お上品”な印象を受けたのは、やはりスコセッシのこの映画に対する態度のあらわれなのではないかと疑ってみる。本当にこの映画、作りたかったの?

芳賀 健
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映画ライター・編集
10

アメリカの覚悟が見える傑作

このレビューにはネタバレが含まれています。

あくまでも変えず、我を通すんだというのがはっきり伝わる。
過去も全部笑って流し、俺らは突き詰めるんだという強靭な意志。
とんでもない傑作。ディカプリオはスコセッシを超える時代のアイコンだ。

都知事選を比べると、もう随分日本はアメリカから離れましたね
「アメリカン・ハッスル」とは励まし方がまるで違います。
違うのは求めている層の方です。

名言、名シーン、名演技が多過ぎて、笑いながら泣いてました。
ディカプリオにオスカーあげたい。

やっぱり思うんです。
映画を超える現実を観客に魅せるのも映画だと。

ラストシーンは素晴らしすぎる。
これが相変わらずのアメリカだ。

完山 京洪
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映画人
7

腹をくくった宣伝プランにシャッポを脱ぎました。

賛否両論あって当たり前。クズのクズっぷりをクズクズに描き出したこの作品を、サイコーにくだらない、むしろカッコイイという感想もあるだろうし、つまらなくはないがわざわざ観るに値しないと感じるひともいるでしょう。

ただ、そういうモラルの反転に価値を見出すか否かは脇に置きたい。むしろ衝撃だったのは、この映画の最大の弱点だと思っていた主演俳優をフルに利用した宣伝戦略だ。

過去のスコセッシとのタッグ作でレオはさんざん貶されてきた。いつも深刻そうな顔をして眉間にシワを寄せ、オスカー欲し気な熱演が空回りしてる首の太い童顔、といった感じ。あれ、ずいぶんひどいな。いや、みんなが言ってそうなことを脳内シミュレーションした結果なんですが、違いますかね?

『アビエイター』大好きな自分には異論があるが、今作に話を絞ると『ウルフ~』のレオは持ち前のマジメさばかり印象に残り、クズがバカをやっている様を一生懸命に演じているように見えた。もちろん全力投球だが、演者の情熱が前に出てしまっている。演技に余裕や愛嬌がない。

ああ、またレオは大根だ役不足だと書き立てられるのか、かわいそうにと勝手なことを思っていたが、日本の宣伝はその「欠点」を前面に売り出した。レオの「ドヤ顔」を見よ的なアレである。

結果、この映画は「“元タイタニック”のセレブスターが“これでもか”とクズを演じてますよ」という商品になった。見世物になった。それが作品本来が持っている見世物感ともシンクロして、レオと劇中の主人公ジョーダンを二重写しで観察する映画になった。実際にお客さんも入っている。近年のレオの主演作にはなかったことだ。

たぶん役者としてのレオ自身の本意ではないだろう。でも、そこにこそ“オモシロ”がありますと提示した宣伝の方々の彗眼は本当にみごとだと思うし、ディカプリオという存在について考える上でも実に興味深いケースだなと思う。

村山 章
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映画ライター
8

逆・正露丸糖衣A錠。

賛否評価が分かれている本作。
私は、楽しんだ。

コツは、いわゆる世の中のルールというやつをとっぱらって観ることだ。
そうすれば、「今、決定的に欠けていること」と「普遍的にヤバいこと」が浮かび上がってくる。
苦そうに見えて、ものすごくまっとうなことを提示している。
例えるなら、逆・正露丸糖衣A錠?

現代人(笑)が押そうともしない(存在にすら目をつぶる?)「欲望のボタン」を、ディカプリは3時間近く突いて突いて突きまくる。
この「執拗さ」がメッセージなのだ。

スコセッシが、このテーマでメガホンを取らねばならなくなったほど、世の中タンパクになってしまったのだな。
この「ヤバさの普遍性」は、避けていかねばならない。

茅野 布美恵
茅野 布美恵のプロフィール画像
会社員

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のカラーレビュー

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