ラッシュ プライドと友情

2014年02月07日公開
ラッシュ プライドと友情のポスター
8.1

どんな映画

事故からの復帰の話とか、これが実話だというんだから絶句するしかないよね…。

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フリークレビュー
10

2人の天才ドライバーによる超絶テクニック映画

感性のハントか、テクニックのラウダか。

1976年のF1チャンピオンを争った2人のプライドと友情を描く熱い熱いドラマは、唸る轟音とスピードに任せた感性の映画のようでありながら、その実、クレバーな計算に裏付けされた確かなテクニックによって成り立っている。

死と隣り合せの反動から生の喜びを貪る男、ジェームズ・ハント。野生の本能と駄々っ子のような奔放さをさらけ出す彼は、対照的に冷静沈着で計算高いライバル、ニキ・ラウダを「ネズミ野郎」と挑発する。対するラウダもつねに周囲に笑いが渦巻くハントをつかまえて「軽く見られている証拠だ」とやり返す。この2人の間に芽生えたライバル心、そして後に発展する友情には何の計算もなかっただろう。明日をも知れぬ2人が本能のおもむくままに相手と対峙し、戦った軌跡がそこにある。

それがどうだ。名脚本家ピーター・モーガンの筆致は、まるで、対をなす2人の出自や気性、そしてハントが見舞われる挫折やラウダの大事故にいたるまで、すべてがあらかじめキャンバスに描かれた設計図の一部であったかのようにドラマチックに彩ってしまう。

ロン・ハワードの熟練の技も冴えまくる。スピードを表現するために彼が重視したのは、対象物の移動速度ではなく、移動によってもたらされる副次的な現象だ。エンジンの轟音が鳴り響き、ミラーが小刻みに震え、車が走り去った後に芝生が宙を舞う。ハワードの超絶テクニックで観客はかつてないスピードを体感できる。

伝記映画というジャンルにおいて、通常これらのテクニックは“事実のカリカチュア”と揶揄されがちだが、この映画からは1ミリの嫌悪も感じない。それはたぶん、人がF1やスポーツを鑑賞するとき、常にプレイヤーによるドラマを夢に描いているからだろう。この映画はそんな夢を100のテクニックと説得力で現実に描いて見せてくれるのだ。興奮しないわけがない。

芳賀 健
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映画ライター・編集
9

作用する人と人と…その連鎖を信じたくなる。

人を奮い起たせるのも人。
このシンプルな影響が、まったく違うキャラクターの2人に作用していることに「事実と映画の奇跡」を感じる。
自分と真逆、しかも理解しがたい相手。だけど、尊敬することを止められない。
そんな出会い、そのものにかき乱される。
自分はどうだ?と。
サブタイトルはスマートとは言えないが、決して外してはいない。

奮い立ち、自分の尊厳が何かをブラさず、欲しいものを掴み取る。
これは、一人ではできないことを、この映画は爆音とともに叫んでくれている。
それは、主演2人だけでなく、ラウダの妻にも強く…。
最初から妻だったわけでも、ましてや、レーサーの妻だったわけでもなかった彼女が「その人」になれたのは、彼女だけの力ではない。

ラウダがレースのクラッシュで病院の運び込まれ、そのベッドから微かな意識のなかで認める妻の姿。
このシーンが、最後まで頭を離れなかった。
パンフに載っていたラウダのインタビューに、「映画での細かい描写に当時が甦った」とある。
彼女の記憶も、そのひとつだと確信する。

レーサーの孤独を描きながらも、孤独ではないと感じさせる傑作。
事実と映画の貴重な出会い。
ロン・ハワードにはずれなし。

茅野 布美恵
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会社員
9

You always drive me crazy.

このレビューにはネタバレが含まれています。

タイヤの溝から吹き上がる水滴、垂れ込める暗雲、相手を縁石に詰めるコーナリング、吹き上がる炎、視界を防ぐ雨。そもそもレース映画は共有感覚を作るのが難しい。大抵は「車そのもの」に寄りすぎてしまうのだ。そこを一歩引き、共有できる「危険感覚」描写を架け橋にして、観る側を二人の死地に追い詰める。ホンと画は余剰なく鍛え上げられた、まさに映画自体が驀進する「モンスターマシン」。

ハントとニキに交互に訪れる挫折。ハントが快進撃を続ける間、ニキは病室で苦闘する。ドレーンの気管挿入は想像を絶する苦痛に肺を傷つけるリスクを伴う。けれどニキは「もう一度やれ」と求める。そしてハントの自責。互いが同じコース上にいなくても互いを背負って戦っている。最終戦、ハントはニキと同様に自分を死地に追い詰めようとしたのかもしれない。富士のスタートグリッドで交わしあう二人の目礼にはマジでシビれる。

「対決」と同時に「選択」の映画でもある。人間は完全ではない。宿敵は常に自分との合わせ鏡になり、自分の生き方を問うてくる。相手と自分をエンジンのピストンのように無限に往復する意識は圧力となって、排気音を越えた静寂の彼方に彼らを解き放つ。その先の「選択」は神々しいほど純粋で、対決があるからこそ生まれた止揚なのだ。

客観視点のように見せながら、ラストにニキの独白を持ってくる。これが「対決する運命」の重さを際立てる。対決が人生を変え、宿敵への渇望が人生をドライヴする。永遠に「望んでも得られない」宿敵の資質。憧れとリスペクト。それは同様に「望んでも得られない」夢や野望にもがく無数の人々の魂を普遍的に刺激する。単なる勝負話を越えて神話に仕上げたホンの強度に感嘆する。

久々にハンス・ジマーのサントラにも気持ちが上がる。吠えるバスドラムに啼きあがるギター。魂に何かを抱いて挑むときにハマる音楽。しばらくラン中の脳内音楽になりそうだ。

Daisuke O-oka
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VTRディレクター
8

よかった

このレビューにはネタバレが含まれています。

 ハントがちょっとへこむ出来事があっても、その時目についた女にちょっとムラムラすると次の瞬間にはセックスができているというのが羨ましすぎる。3Pなどどういうふうに誘えばできるのかとても気になった。

 ハントがそんな人間なので断然つまらなく生きているラウダに勝って欲しかった。しかしそんなつまらない損得勘定をしている男がレーサーなどというクレイジーな職業をなぜ選ぶのか、もうちょっと突っ込んで描いて欲しかった。そういう意味では人間的な歪みが激しいのはラウダなのかもしれない。

 人間性にスポットを当てて描いているとの事なのだが、車やテクニックについてもうちょっと焦点を当てて欲しかった。なぜラウダやハントが速いのか、なぜ連勝していたのか、この映画では単に運転が上手で命知らずで、車がいいからなのかなとぼんやり想像するしかない。実際そうなのだろうか。とにかく、そこが不満だった。ここでこうしたから勝った、というのが分かるとよりレースがスリリングだったと思う。

 最近、MT車に乗っているのでクラッチ操作や素早いシフトチェンジは見ていてワクワクした。仲良く遊んでいるだけが友情ではないということや、嫌われ者やいかれた人間に対する優しさが描かれた素晴らしい映画だった。

古泉 智浩
古泉 智浩のプロフィール画像
マンガ家

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橋向 昭一

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