ベルリンファイル

2013年07月13日公開
ベルリンファイルのポスター
7.8

どんな映画

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フリークレビュー
9

アクションに実在を、ドラマに夢を。

ビルの外壁アクションでジャッキーを超えるために必要なのは、ジャッキー以上のアクション俳優を呼ぶことでも、より高いビルを探すことでもない。足場となるエアコンの室外機を崩れ易くし、その上を渡り歩くごく普通の女性に、今にも脱げそうなハイヒールを履かせればいい。そこに生まれるスリルの振り幅がアクションのすべてだ。でもって、スリルはリアリティから生まれる。自分ならどうする?という実感を持てさえすれば、どんな小さなスリルだって楽しい。

本作はアクション映画史の名シーンを超えてやろうと息巻いている。で、その方法論としてリアル化がある。これまで披露されて来た荒唐無稽なアクションをことごとく実在(リアル)化し、見栄えよりも実在の持つ迫力でそれらを塗り替えようとしている。
例えばガン=カタ。銃を手に組手のように格闘する、世界中のアクションファンを喜ばせた2002年のあの発明。本作終盤の銃を握っての壮絶な殴り合いは、まるでガン=カタの原型を見せられている感覚になる。ああこの殴り合いを参考してにガン=カタは編み出されたのかも!と、つい思わされてしまう。
他にも走る車にぶら下がる香港アクションのあれや『スカイフォール』の見せ場だった掘っ立て小屋での銃撃戦が、実在化をもって塗り替えられている。もちろんこの作品独自の発明もある。爆走する車の迫力を、クローズアップではなく、思いっきり俯瞰した空撮で捉えた図の目新しさは実際に見ていただくしかない。
この先10年は不動と思われたアクション映画の覇者『ザ・レイド』からわずか1年。またまた韓国映画に不意をつかれた。

しかし南北問題は飽きさせない。
現実ではますます複雑化する北と南も、映画の中でならいくらでもバディを組める。そんな国民の夢を託せる韓国映画は間違いなく社会的に機能している。アクションに実在を、ドラマに夢を。今韓国映画が最強。

田中 啓一
田中 啓一のプロフィール画像
詩人だねぇ
9

日本人はスポイルされている。

このレビューにはネタバレが含まれています。

序盤から映像の洪水。膨大な情報量をざらついたトーンに載せることで生まれた必然のカットリズム。ここで目を凝らすも流れに任せるも良い。中盤から情報が揃ってしまえば、ある観客は情報の精緻さに、ある観客は濃厚なアクションに、ある観客は身を切るような演技に鷲掴みにされているので、ついていけなくなる心配は無い。

硬質なスパイ作品は観客を選ぶ。しかし一旦スクリーンの前に座った者は誰だろうが離さない。その気概が絶えず押し寄せる。銃撃も殺陣も臨戦のリアリティを伴って重く痛い。俳優たちの顔も肌も台詞なきカットで実に雄弁。何より作り手が苛烈な現場と「南北状況」を重ね、存分に楽しんで料理している。

歴史と社会の全てをタブーなく語れる素地の有無で、映画の社会的機能に大きく差が出る。なぜ日本では「敗戦」を「終戦」と言い換えるのか。「終戦のエンペラー」のような企画が日本製作で出なかったのは何故か。これは単なる民族性ではないと感じる。

日本と韓国の優劣比較などにトータル的に意味は無い。しかし映画においては物量・熱量ともに彼我の差は明白。その証左が本作だ。当たろうがコケようが単純に「同じことができるか?」だけなのだ。しかし日本人にはなぜできないのかが逆に謎だ。歴史や民族性ではない、ポテンシャルを抑えるスポイル要素が複数の外部から時間をかけて巧みに働いているとしか思えない。

そう思わせるほど本作は刺激的だ。日本にも諜報小説は数あれど、それらを近年これほどのスケールと娯楽性で映像化できた試しは無い。遠慮せず作ればいい。しかし手がけるには隣国に謙虚に学ぶしかない。これほどの映画を作る頭脳、調整力、胆力、映画を支える社会の力、国際的な伝播力。日本人がそれらを身につければ、スポイル要素を突き止め、映画を通じて社会を変えられるかもしれない。

言い過ぎたか。熱に浮かされている。
それほど魅了された。悔しかった。

Daisuke O-oka
Daisuke O-okaのプロフィール画像
VTRディレクター
一般レビュー

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