シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語

2012年11月09日公開
シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語のポスター
5.8

どんな映画

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フリークレビュー
7

「舞台で観ればいい」を覆す映像体験。映画だからこそ出来ること。

このレビューにはネタバレが含まれています。

 数々の演目が来日し、既に強固なファン層を獲得している「シルク・ドゥ・ソレイユ」その3D映画版がやってきた。製作者の筆頭がジェームズ・キャメロン。この人は「何が3Dに一番適しているか」を世界で一番考え抜いているんじゃなかろうか。

 「シルク」の素晴らしさは、その独特な世界観と壮大さもさることながら、出演者の造形美と身体能力だ。ダンス、バレエ、体操、シンクロ、柔軟雑技、競技をも凌ぐ「体術」が渾然と溶け合う。

 しかし舞台だと全ての対象物が観客席から等距離にある。中心に目が行くと、脇の動きを見逃してしまう。そして体術や造形美にまで目を凝らすにも限界がある。動きが速すぎれば見落とすかもしれない。オペラグラスで視界を狭めるのも野暮だろう。

 その難点を克服するのが「映画」「3D」なのだ。「寄り」「引き」「ワーク」が自由自在。スローやマルチアングルを駆使して、舞台上の出演者の表情も、水中ダンサーの野性的な動きも克明に見せる。3Dは単に飛び出すわけでなく、視覚以外の感覚をも励起する。出演者の顔や身体の「表情」を観客側に「全身で受け止めている」ように感じさせる。

 サーカスを訪れた少女が、空中ブランコの青年を追いながら異世界に迷い込む。そこは「シルク」が演じる数々の舞台が連なった一遍の「世界」。「O(オー)」「KA」「Mysterie」など複数の演目が彼女の旅路に次々と現れる。映画一本分のお値段で「シルク」の舞台をいくつも楽しめるのはお得。
 数々の独特な世界を支えるのは古今の意匠や音楽をアレンジする構成力。スタッフがどれほどインプットを重ねているか、想像もつかない。

 台詞はほとんど無く、少女の視点に同化しながら共に冒険する感覚。先進の技術がお膳立てした割に、ラストの感動はどこまでもピュア。美しさとエネルギーに言葉を失う。あれほど動く身体が欲しくなる。

Daisuke O-oka
Daisuke O-okaのプロフィール画像
VTRディレクター
5

観劇の追体験<原体験の翻訳

人間の躍動を伝えるシルク・ドゥ・ソレイユの魅力は、いま目の前にいるパフォーマーたちの人間離れした技の数々を“目撃”あるいは“体験”することにあるのだろう(残念ながら未体験)。その意味で、カメラというフィルターを通して描く映画という形態では、どうしてもシルクの本質を味わうことは出来ない。

もちろん、作り手もそのことは百も承知だ。映画と舞台の違いは何かを徹底的に吟味した上で、観劇では味わえない特色をスクリーンに宿している。それはストーリーテリングであり、カメラワークであり、映像編集だ(3Dは単に観劇の疑似化を試みる方法に過ぎない)。

ただ、残念ながら縦横無尽のカメラワークも世界観の創出を補う映像処理も、シルクの世界をフィクションに見せてしまう逆効果を生んでしまう。哀しいかな、映画という媒体に慣れきってしまった体は、カメラの向こうにあるものにレンズの後ろ側の作為を無条件に読み取ってしまうのだ。

また、ストーリーテリングという映画最大の武器も、ここではうまく機能していない。役者たちの顔をアップで捉えることが出来るという利は、残念ながらその対象が感情表現に疎い肉体的パフォーマーである弱点を克服できていない。ボーイ・ミーツ・ガールな物語が根底に流れようが、観客は彼らの感情に共感することを許されず、ストーリーの存在を強く意識することはない。

作り手の意図はそもそも“観劇の追体験”ではなく、映画ならではの表現で“原体験を翻訳”することにあったのだろう。そこに作為を感じてしまう自分のような人間は逆に映画の限界を感じて寂しくなってしまうのだが、一方でこれが広く受け入れられるのであれば、またひとつ映画の可能性が広がったと喜んでいいのかもしれない。

後者であることを祈りつつ、大ヒットを期待したい。

芳賀 健
芳賀 健のプロフィール画像
映画ライター・編集

『シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語』のカラーレビュー

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