ふがいない僕は空を見た

2012年11月17日公開
ふがいない僕は空を見たのポスター
6.7

どんな映画

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フリークレビュー
3

性描写が稚拙な、苦虫をつぶしたようなふがいない映画

窪美澄の小説が'11年本屋大賞2位、山本周五郎賞受賞ということもあって、どんな「性」を見せてくれるのかと期待してみたが、濃厚だという触れ込みの性描写は映像的にまったく「映画的」でなく、3話連続ぐらいのTVドラマで十分な内容で、失望するしかなかった。

ヌードに挑戦した田畑智子は相当に勇気を出したはずだが、監督のタナダユキの描写はありきたりすぎで、ただただ冗長に感じる始末(この話で、141分とは長すぎる!)。ただでさえ貧相な田畑智子のヌードを観せられても、(女性日照りの筆者でも)下半身が1ミリも反応しない。演出をつけたタナダ監督自身がどのようなセックスライフを送っているか詮索する気は毛頭ないが、古今東西のそうしたセンシュアル(官能的)な映画から良質なエッセンスを汲み取るいるわけでもなく、ただただ凡庸な描写に終始したのは残念。

たとえば、ベルナルド・ベルトルッチ監督の『ラストタンゴ・イン・パリ』では茜色した陽光がパリのアパルトマンを照らし、マーロン・ブランドとマリア・シュナイダーが演じた男女の不条理なセックスをコダックカラーで彩っていた。同監督の『暗殺の森』でもドミニク・サンダやステファニア・サンドレッリの衣裳は“ストッキングのたるみ”に至るまで周到に計算されているのだ。

本作ではそうした大前提の性描写があまりにも幼稚で何の工夫もないため(しかもコスプレは生理的に大嫌いだ)、高校生の主人公たちの「赤裸々な生きざま」に斬り込んでいるはずの「本来のストーリー(=感動のポイント)」がぼくには伝わってこないのだ。

永山絢斗や窪田正孝は今後日本の映画界を背負っていく人材なのだろう。プラス点は彼らを観られたことだろうか。蒼井優主演のタイトルじゃないが、ぼくには苦虫をつぶしたようなクソ映画だった。

サトウ ムツオ
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映画伝道師
7

不幸な人たち

このレビューにはネタバレが含まれています。

 大変力のこもった作品で、出演者や作者の意気込みが伝わるし、印象的な場面やカットが多く充実した作品だった。しかし、出産や性について、前向きなメッセージがほとんど感じられなかった。生きているのが辛くてしかたがない、好きで産まれて来たわけではない、といった思いが丁寧に描かれていて、そういう作品なのだろうけど、自分とは意見が合わないと感じた。

 アニヲタの田畑智子は見事な脱ぎっぷりで気合を感じさせる一方で、本当にアニメが好きでどうしようもないというような幸福と不幸と背中合わせで、しかし情熱たっぷりといったヲタらしさは全くなかった。そんなヲタばかりではないという意見もあるだろうけど、あまりに情熱が希薄でヲタを簡単に遊び道具にしている感じがした。

 そして子供を本当に望んでいる登場人物が、田畑智子の義母や頭のおかしい妊婦だけだった。子供を本当に愛しく思いたい、家族が増える喜びに希望を抱いている登場人物が皆無なのはとても残念に思った。そこは大前提とした上で、様々な問題を描いてこそなのではないだろうか。

 不幸で寂しい人の群像劇で、げんなりした。しかし、友達の流出画像をコピーして学校に撒き、それでいて彼の事を大事に思っているという描写はひどく矛盾たっぷりで、心が苦しくなる感じがすごくよかった。

 

古泉 智浩
古泉 智浩のプロフィール画像
マンガ家
8

生きることは、消えない理由を探すこと。

人は、生きている限り「恥ずかしさ」と闘わなければならない。
恥ずかしさを感じるとき、大なり小なり「消えてしまいたい」と思う。
でもその都度、「消えてはいけない理由」「消えたくない理由」「消えてほしくないと思ってくれる人」を必死で探す。
そんなとき、人はなかなか顔を上げられないものだ。
これは、必死で上を向こうともがく人たちの輝きを「捉えたいと願う」映画だ。

タイトルどおり、スクリーンの中で「僕」は空を見る。
けれど、それはまだ恐る恐るだ。
なにかが解決したかのようにみえても、地面を見続けてきた人は、そんなに簡単に上を向けるものじゃない。
そんな「僕」が最後に、生まれたばかりの赤ん坊におくる言葉。
それが、「自らの肯定」を、「消えないこと」を許してくれる。
だから、昨日より少しだけ、もっと上を向ける。

向井康介脚本の作品で、また好きな一本が増えた。

茅野 布美恵
茅野 布美恵のプロフィール画像
会社員

『ふがいない僕は空を見た』のカラーレビュー

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